自己破産から復活した経営者 清水康次

2024年11月19日

縫製工場の後継ぎ→自己破産→ウェブコンサルタント

18歳の時に父が経営していた縫製工場の後を継ぐ

清水康次

18歳の秋。その日は休日で、お昼過ぎまで働いていた父親がテレビを見ていて突然倒れ、そのまま亡くなりました。

父親が経営していた縫製工場を私が継ぐことになりました。これは後から気付いたことですが、適切な情報と知識があれば、相続放棄するべきだったと思っています。

ただ、伯父さんが借金の保証人になっていたので、実際に相続放棄が出来たかは分かりません。法定相続人全員が相続放棄しても、連帯保証人が債務の支払いをしないといけないので、相続放棄は許されず、縫製工場を継いでいた可能性は高いと思います。

データに基づく管理を行い、工場は掌握するも、いびつな取引形態

縫製工場の経営者となり、それまで感と経験によって管理されていた工場をデータに基づいて管理するようにしました。

データによる管理に対する抵抗もありましたが、正しいことを継続するに従って、味方になってくれる従業員も次第に増えて、工場運営は上手く行きました。

一方で、取引先との関係は、「協力工場」と言う名目で、1社と100%取引と言ういびつなもので、他社と取引すれば、発注は停止すると言う暗黙の了解もあるもので、主導権が完全に発注企業が握っている状態でした。

買い叩き

100%1社取引きで、生殺与奪権を完全に握られている状態で、買い叩きが起こるようになります。

全く合わない単価を提示されても、他の取引先を探すことも出来ない状態で、生産に着手するしか無く、月末に「値増し」と言う単価調整が行われる異常な取引に。

「値増し」と言っても、黒字になるような単価調整などしてくれる訳も無く、ギリギリの経営が続く事態になります。

買い叩きは下請法に違反する行為なので、公正取引委員会に申告しましたが、申告が1社のみだったので、公正取引委員会が動いてくれることはありませんでした。公正取引委員会が動く場合、申告した企業名も伝えられるので、報復を恐れる他の下請け企業はなかなか申告に踏み切ることは出来なかったのだと思います。

結果として、当時40社ほどあった協力工場で今も縫製工場として経営を続けている会社は5社しかありません。

取引先の意向で工場新築、バブル崩壊

バブル末期に取引先から、福利厚生を充実した50人以上の規模の工場にしないと取引きの継続はしないとの発表がありました。

当時30人規模の工場だったので、取引先の意向に従って、50人規模の工場を新築しました。

しかし、着工する頃には既にバブルは崩壊していて、竣工後には、「人員を増やすな」との通達で、50人以上を想定した工場に30人では、「値増し」があっても、全く採算が合わず、赤字経営が常態化します。

生産拠点の海外移転により100%取引きが解消

生産拠点が海外移転が進むようになり、取引先企業も生産拠点を中国に移す動きが出て来たことと、販売不振により、100%1社取引きが解消され、独自の販路開拓が求められるようになりました。

しかし、工場新築による固定費の増加や買い叩きによるキズは既にかなり深い状況になっていて、既に債務超過になっていました。

下請け脱却 自社ブランド構築へ

新しい販路を求めて、新規取引先の開拓をしても、生産拠点の海外移転が進んでいる状況で、下請け体質のままだと、価格競争に巻き込まれるだけだと判断して、自社ブランドの構築に取り組むことにしました。

自社ブランド商品の試作を行い、小売店への営業をしてみましたが、反応が悪く、全く商品を置いてくれるところはありません。「縫製が良い」ことを強みとして展開を考えましたが、縫製が良いことが直接的な購買動機にはならないと痛感しました。

強みを生かしてインターネット販売

自社の強みをもう一度考えてみると、お客様の要望通りの商品を高品質で作成出来ることだと改めて考え、パーツを規格化して、パーツを自由に組み合わせて、プリントや刺繍をオリジナルで作れるTシャツやスウェットシャツのシミュレーションシステムを搭載したWEBサイトを構築して販売を開始しました。

インターネットの販売初年度はは惨憺たる状態でしたが、2年目から、縫製工場がも持っているノウハウや店頭での商品の見分け方などのユーザーが知りたいコンテンツを公開すると、アクセス数は激増して、数年で、インターネット受注で縫製工場が100%稼働するまでになりました。

IT経営百選の最優秀賞を受賞したが・・・

経済産業省のIT経営百選の最優秀賞を受賞するまでインターネット受注は順調に推移しまし。しかし、オーダーメイド生産ではありましたが、縫製工場の稼働を優先したために価格設定は低めにしていたことや、進化の速いインターネットの世界では、シミュレーションシステムへの投資を継続しないといけないこと、その上、不当返品によって回収困難なお金まで出てきてしまい、うつ病も発症し、前向きに仕事が出来る状態では無くなり、これが決定打となって、継続して行く事は困難と判断しました。

遂に自己破産

自己破産

経営実態としては、かなり危険な状態であっても、必ず改善出来ると考える正常性バイアスが働いていたのか、個人で消費者金融からの借り入れをしたり、社会保険料や税金の滞納。給与の遅配など、どんな手段を講じても経営を続けようとしていました。

自己破産するのなら、出来るだけ早い方が、迷惑を掛ける人が少なくなるので、経営に行き詰まっている場合は、出来るだけ早く法的措置を行うべきだと思います。

法人は勿論、個人や家族も保証人になっていたので、一緒に破産手続きすることになりました。

自己破産を弁護士さんに相談する段階では、既に観念していたのか、かなり平穏な気持ちでしたし、手続きも辛いことは何も無く無事に免責となりました。

しばらくは行動することは出来ず

自己破産では、最低限必要な現金は残せることになっていますが、個人資産も全て注ぎ込んで事業運営をしていたので、手元のお金はほとんど無い状態でしたが、自己破産後はしばらく放心状態で、何もすることが出来ませんでした。

会社を倒産させるまでに至る経緯では、多くの人に迷惑を掛け、一つの人格(法人)を抹殺することなので、心理的にはかなり大きな負担だったのだと感じました。

その後、飲食店の物販部門に就職して、インターネットの販売などを担当し、WEBコンサルタントを目指し、派遣社員とのダブルワークをしながら受注を増やして行きました。

ほとんどの人が経験しない経験を強みに復活

復活

相続放棄した方が良い相続財産を相続してしまい、100%1社取引と言ういびつな取引き環境で買い叩きが発生し、この取引先に振り回されて債務超過に陥り、インターネットを活用して、強みを生かした自社商品の販売を行い、ネット専業の縫製工場になるも自己破産と言う、ほとんどの人が経験出来ない経験を生かして、再起し企業のコンサルティングを行っています。

自己破産に至ったのは、不当な扱いがあり、難しい状況にあったにせよ、意識したかしなかったかは別として、自身の選択の結果だと思っています。

不当なことに対して声を上げることにより、さらに不利益を被ることを恐れて、戦うことをしなかったために最悪の事態を招いてしまった。

もっと注意深く選択を意識していれば、別の選択が可能で、違った結果になっていたと思います。全ては自分の責任です。

自分自身は、企業として、何をやってはいけなくて、何をする必要があるのかを一般の経営者以上に学んでいると考えています。

不当な取引環境にある下請け企業が、その状況から脱することや、自社の本当の強みは何なのか。その強みを徹底的に生かした情報発信のサポートに特に力を入れています。

現在では、出身地域の活性化にも取り組んでいます。

自己破産したので、無借金で復活し、クレジットカードも利用せず、デビットカードで決済しています。自己破産すると、一定期間ブラックリストに掲載されて、その間の借り入れは出来ませんが、ブラックリストから消えても借金を踏み倒した金融機関から融資を受けることは出来ません。私の場合、地元の銀行から富山県の信用保証協会の保証での借り入れや、日本政策金融公庫、かなりの消費者金融からの借り入れを踏み倒したので、初期投資が無く、無借金で開業出来る仕事を立ち上げ、事業を継続しています。

自己破産しても復活は可能

自己破産しても、裁判所で免責されれば、再び経営者となり復活することは可能です。

ただ、自己破産するのは、自身の行動に何かしらの問題があったからで、自身の行動や思考パターンにどんな問題があったのか、何が原因で失敗したのか自己分析する必要があります。

また、金融機関からの借り入れは制限されるので、金融機関以外の資金調達の方法は検討する必要があると思います。例えば、友人知人に出資してもらって会社を設立するか、設備投資がほとんど必要ない事業をするなどです。

自己破産すると言うのは、誰でも経験出来ることでは無いので、その経験は新たなビジネスを行う上でも大きな強みになるはずです。

世の中は、生成aiの登場で、大きく変わっています。そのような時代の変化の中で、自己破産された方は、自分の強みを最大限に生かして、成功を勝ち取って欲しいと思います。

実際には自己破産から復活するのは難しい

実際に自己破産から復活するのは難しく、自己破産後に起業したと言う情報はほとんど聞きません。

恐らく、これは、資金などの物理的な問題よりも、心理的なダメージのためだと思います。どんな事情があっても、会社を倒産させて、財産を失うことは、大きな病から立ち直るのとは違い、かなり強い敗北感を味わいます。

そして、ほとんどの人は自信も失い、再起することが出来ないのだと思います。

しかし、人間は失敗から学ぶものであり、倒産すると言う大きな出来事は、大きな学びのチャンスでもあります。自分が何故自己破産まで追い込まれたのかを冷静に分析して、次の人生に生かして行けば、より豊かな人生を送ることが出来ると思います。

自己破産された方が、まだ、自信が持てなくて躊躇しているのであれば、小さな事業から始めて、成功体験を積み上げて、自信を取り戻して欲しいと思います。

あなたはダメな人間では無い。

会社概要

企業名Find content
代表者清水 康次
所在地富山県砺波市深江1丁目104 ウェルネスⅡ 203
電話番号090-2036-1027
E-mailkoji@goodcontent.jp

Posted by 清水 康次